カダージュたちとの戦いが終わった。

星痕は消え、多くの子供たちに笑顔が戻った。
エアリスの降らせた雨と教会の泉のおかげで元に戻った子供たちは、目を輝かせ教会を後にしていく。
皆、自分を待つ者の元へ帰ったのだ。両親のところへ、友のところへ、そして愛する者の所へ。

それを確認すると、仲間たちはあっさりとそれぞれの家路に着いた。
久々の再会を喜ぶわけでもなく、簡単に。また明日、再会するかのように。

「電話出てよクラウド!」

「マリンによろしくな!」

「じゃあな!」

「ほな、クラウドはんティファはんお元気で!」

ユフィは故郷のウータイ、バレットは油田の採掘現場へ。
シドは新型の飛行艇に乗って、ケットシーはレッド
XIIIにまたがりエッジの方へ走っていった。
リープはエッジにいるのだろう。

「・・・・・・」

何も言わず立ち去ろうとするヴィンセントにクラウドは声をかけた。

「ありがとう、ヴィンセント」

「・・・礼を言う必要は無い。おまえ自身がやったことだ」

ヴィンセントはめったに笑わない、だがこの時だけは微笑んだような顔をクラウドに向けた。

「そおかな・・・」

クラウドは隣にいたティファに一瞬目を向ける。

「・・・大丈夫だ、もう」

そう口にすると、真っ赤なマントを翻し彼もまた去っていく。
しばらくその姿を見送っていたが、やがて夕焼けに溶け込むように赤いマント消えてしまった。

クラウドとティファ、そしてその手を握ってマリンとデンゼルだけが残された。

「みんな行っちゃったね」

ティファが遠くを見つめるように目を細めた。

「また、すぐ会えるさ」

「そーだね、すぐ会えるよね」

くるりと身軽に身体の向きを変え、ティファがクラウドの正面にたった。体中が夕日で赤く染まっている。

「帰ろっか、私たちの家に」

クラウドの手を握り、微笑む。夕日のせいか、なんだかその笑顔が眩しい。

「あぁ」

自分の手を握る優しい手をしっかりと握り返した。

「わぁーい!帰ろ、帰ろ!」

クラウドの空いていた手をマリンが強く引っ張る。

「クラウド、帰ろう!」

デンゼルも嬉しそうに走り始めた。

 

七番街落下事件の後、ミッドガルの周りに造られた街エッジ。
ティファの店「セブンスヘブン」も二年前にこの街に再建された。

瓦礫の間を縫うように道を進んでいくと、やがて「セブンスヘブン」の看板が姿を現した。
昨晩出かけてから何も変わっていないようだ。幸いなことに今回の騒ぎにはこの辺りは巻き込まれなかったのだろう。
マリンが小さな手で鍵を差し込みノブを回すと、いつもと同じく錆びた音を鳴らしながら扉が開いた。
真っ先にマリンが中に飛び込み、それに続くようにデンゼルが中に入った。

「ただいま!」

「ただいま!」

ちらっとクラウドを覗き込んだティファも、繋いでいた手を離しクラウドよりも先に中に入る。
クラウドは「セブンスヘブン」の看板を見上げ、そしてゆっくり入り口へと向かっていった。
開かれた扉から中に入ると、そこは店のホールになっている。
普段ならティファが中にいるはずのカウンターがあり、見慣れたテーブルが並んでいる。
昨日の晩に一度立ち寄っていたが、ここに来るのはひどく懐かしかった。

出て行ってからそんなに経ってはいないはずなのに、どうしてこんなにも懐かしいのだろう。

「どーしたのよ、クラウド」

ティファが笑っている。呆けたような俺が、面白くてしょうがないようだ。
決まりが悪そうに立っていたクラウドの足元に、マリンとデンゼルが抱きついた。
小さな手がそれぞれクラウドの服を掴む。

「お帰りクラウド!」

「お帰りなさい!」

二人はクラウドを見上げ、にっこりと笑う。

「・・・ただいま」

その言葉を反射的に口にすると、懐かしさの理由がなんとなくわかったようだった。
(俺は、長い旅に出てたんだ)
そして、帰ってきた。子供たちの元へ、そして―
クラウドは二人の頭を優しく撫でた。子供たちはそれが嬉しいのかくすくすと笑っている。
下げていた目線を元に戻すと、嬉しそうに笑っているティファと目が合った。
(帰ってこれたんだ、ティファの元へ・・・)

 

 

翌朝目を覚ますと、見慣れた天井の傷が目に止まった。
こういったちょっとしたことで、自分が家に帰ってきたことを実感した。
窓の外の景色、ベッドの軋む音。全てが自分の帰りを待っていたような気がしてしまう。
(自惚れてるな・・・)
自分のそんな考えが少し恥ずかしい。
久しぶりに眠った自分の部屋は、昨晩帰って来たときにはすでに綺麗に整えられていた。

(いつでもクラウドが帰ってきてもいいように)

そんなティファの想いから、彼の部屋は出て行った時のままになっていた。掃除も毎日されていた。
身を横たえたベッドからは、優しいかすかなティファの匂いがした。

簡単な身支度をすませクラウドが階下に降りると、店のホールから人の気配がした。
そちらに向かい覗き込むと、そこには案の定ティファの姿があった。店で使うグラスをタオルで拭っている。

「おはようクラウド!よく眠れた?」

手は動かしたままティファが尋ねた。

「あぁ、よく眠ってたみたいだ」

よく眠れたのは事実だった。隣の部屋のティファが起きていたのも、まったく気づいていなかった。

「あー!クラウド朝寝坊!」

大きな音を立てて扉が開き、マリンが外から戻ってきた。そのままの勢いでクラウドの足にしがみ付く。

「おはよう、マリン」

「今日はクラウドずっとここにいるよね?ね?」

マリンの目に不安な色が映っている。クラウドが出かけてしまったら戻ってこないような、そんな気がしているのだろう。
クラウドは額に手を当てた。今日は以前からの配達の仕事が入っていた。

「・・・すまない、マリン。今日は仕事が入ってるんだ」

「やだっ!今日は一緒にいて!」

マリンが駄々をこねるようにクラウドの服を引っ張る。
二人を黙って見ていたティファがなだめるように少女の名を呼んだ。

「・・・マリン」

カウンターから出てくると、目線をマリンに合わせるようにしゃがみこんだ。

「クラウドはお仕事なの、お客様と約束してるのよ。約束は破っちゃいけないの、知ってるよね?」

「・・・うん」

うなづいてはいるものの、マリンはまだまだ承服しかねるといった感じだ。
ティファが言葉を続ける。

「クラウドは約束破るような人じゃないよ。マリンはクラウドに約束破らせちゃっていいの?」

「やだ・・・」

柔らかい髪を揺らしながらマリンは首を振る。
小さくても聡明な彼女は、ティファの言葉をきちんと理解している。
ぐっと涙を我慢する少女をティファが優しく抱きしめた。
マリンのこの賢さもこの世界で生きてきたために身に付いてしまったものなのかと思うと、クラウドは胸が痛んだ。

「マリン、仕事が終わったら帰ってくるからな」

「うん」

クラウドがマリンの頭を撫でると、素直な返事が返ってきた。
デンゼルと遊んでくるとマリンが出て行き、それを見送ったティファは立ち上がった。

「さて、私も準備しなきゃね」

「今日も店を開くのか?」

「うん。幸い材料はあるし、休んでなんていられないよ」

にっこりとティファは笑った。

「そおか・・・」

「クラウドも仕事なんでしょ?・・・気をつけてね」

自分だって大変なはずなのに、いつでもティファは俺の心配を真っ先にしてくれる。
何気ない言葉でいつも労わってくれる。
ティファの言葉に送られるように、クラウドは外へ出た。表に止めてあった愛車にまたがる。
天気はいつもと同じようにうっすらと曇っていたが、気分は悪くなかった。昨日よりも空は明るく感じる。

「いってらっしゃい」

後ろについて来ていたティファが、クラウドの背中に声をかけた。
はっとして振り返ると、先ほどと変わらぬ笑顔でティファは立っている。長い髪がゆっくりと風になびく。

「・・・どうしたの?」

クラウドが黙ったままじっと自分を見つめているので、不思議そうに首をかしげる。

「・・・行って、くる」

「うん、いってらっしゃい!」

ティファに見送られ、クラウドはバイクで走り出した。
誰かに見送られるのは久しぶりだった。
一人で暮らしている時は、迎えてくれるものも見送ってくれるものもいなかった。
誰かに見送られることが、こんなに嬉しいなんて―。
(いや、ティファが見送ってくれるから・・・)
肩越しにわずかに振り向くと、自分を見送るティファの姿がまだそこにあった。

(いつでも、ティファのいるとこが俺の帰る場所なんだ・・・)

早く仕事を終わらせて帰りたいとクラウドは思った。そんな気持ちは初めてだった・・・。







end








これが初めてのFFZのクラティ小説です。
カダージュたちとの戦いが終わってから翌朝までのクラウドのことを書きました。
細かい設定などの間違いは、優しくスルーしてやってください。。。
次はこのお話をティファ目線で書けたらなと思います。
拙い作品ですが、お付き合いありがとうございました。



>>BACK